政府・与党の追加経済対策となる「経済危機対策」が正式決定した。十五兆四千億円という空前の財政支出で、財政再建目標が吹き飛ぶことは確実だ。
「百年に一度の危機への対応」を理由にした経済対策は四度目になる。定額給付金など先行対策の検証を待たずに新たなメニューが示され続けることには違和感もある。
麻生太郎首相は安心と成長のための政策総出動だ、と胸を張った。しかし、各省庁の懸案事項や聞き心地のいい施策が総花的に詰め込まれ、選挙対策のバラマキであることは明らかだ。
中でも子ども手当の支給や介護職員の賃金増加などの医療・社会保障充実策を一時的な経済対策として実施することには異論がある。地方自治体への臨時交付金についても国と地方のあり方の見直しが先決だ。
財政支出十兆円の想定が国内総生産(GDP)比3%の十五兆円規模に膨れあがったのは、麻生首相が先に「GDP比2%を超す真水(財政支出)規模」という基準を示した結果だ。会見で「有効な事業を積み重ねた」と強調したが「規模ありき」の批判は免れないだろう。
補正予算案での赤字国債と建設国債の追加発行は十兆~十一兆円、当初予算と合わせ約四十四兆円の見込み。新たな借金は税収を上回る公算で異常事態と言わざるを得ない。
経済危機で消えた年二十兆円の需要を埋めるためとはいえ、巨額の財政出動が有効な需要に結びつく保証はない。市場では国債乱発への懸念から長期金利が跳ね上がり、住宅ローン金利上昇や企業の資金調達の負担増を招くとして、効果を打ち消す「もろ刃の剣」との声も出ている。
財政再建の道筋として首相は、景気回復後の消費税率引き上げなど税制の抜本改革を明言した。いずれにしても国民にツケが回ってくる。対策の中身については説得力がなければならない。
民主党も経済対策をすでに決定している。ただ環境に配慮した車の買い替えや太陽光パネル導入促進など政府与党案と共通点が多く、対立軸を打ち出すのが難しくなっている。二年で二十一兆円規模の財政支出の財源には税金の無駄遣い根絶とともに赤字国債発行も検討するとされる。
もちろん雇用や企業支援策などは緊急を要する。二十七日にも国会に提出される補正予算案を早々に成立させ、与野党が話し合い解散するのも選択肢ではある。
だが次世代に多大な負担を残す政策だけに有権者の声を聞くことが必要だ。それぞれの経済対策を盛り込んだマニフェスト(政権公約)を作成し、早期に解散して国民の信を問うことを求めたい。
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